皮膚感作に関するAOPについて

本日は、タンパク質への結合によって生じる皮膚感作に関するAdverse Outcome Pathway:AOPについて、簡単に紹介致します。

https://read.oecd.org/10.1787/9789264221444-en?format=pdf

目的物質が皮膚タンパク質結合して、皮膚感作を生じるまでに以下の11の手順に纏められています。
手順1) 目的物質の生体利用可能性が必須(皮膚の角質層への侵入)
手順2) 目的物質は求電子剤、もしくは、代謝または自動酸化により、求電子剤が生じる物質
手順3) 目的物質の作用部位は、皮膚タンパク質の求核部位(システインまたはリジン残基)
手順4) 分子開始事象Molecular Initiating Event:MIEは、真皮タンパク質への共有結合による摂動であり、これは不可逆的反応。In vivo nでは、特定のメモリーT細胞応答に関連している。
手順5) 生化学的経路は、完全にはわかっていないが、特にケラチノサイトや樹状細胞において、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ シグナル伝達経路や酸化ストレス応答経路などの炎症関連の経路が関係している。
手順6) 細胞/組織レベルの影響は完全にはわかっていないが、次の表皮における応答が関係している。
1)ケラチノサイト、特殊化した表皮樹状細胞 (ランゲルハンス細胞など) および真皮樹状細胞による化学アレルゲンの免疫認識
2)樹状細胞の成熟の証拠である、接着分子、ケモカイン、IL1βやIL-12p70などのサイトカインなどの特定の細胞表面マーカー発現といった形での応答。
手順7) 臓器レベルの応答には次のものが含まれます。
a)樹状細胞のリンパ節への移動し、主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) 分子をナイーブ T リンパ球 (T 細胞) に提示。
b)アレルゲン特異的メモリー T 細胞としての T 細胞の分化と増殖。
手順8) 標的器官は皮膚と局所のリンパ節。 標的細胞は免疫細胞、特にエフェクター T 細胞。
手順9) 重要な生理学的反応は、感作性の獲得。
手順10) 主要な生物反応は、誘発段階で物質による皮膚の炎症です。この応答は、誘導段階で生成される特定のメモリーT細胞の刺激に関連。
手順11) 哺乳類への全体的な影響は、ヒトではアレルギー性接触皮膚炎、また、げっ歯類では同等の接触過敏症。

上記は、皮膚感作が生じる過程ですが、AOPとして纏めますと、以下の通りとなります。
MIEータンパク質への共有結合
重要事象Key Event:KE1ーケラチノサイトの炎症反応、ケラチノサイトにおける抗酸化反応要素の遺伝子発現
KE2ー樹状細胞の活性化
KE3ーT細胞増殖
AOーヒトにおけるアレルギー性接触皮膚炎またはそれに相当するげっ歯類の接触過敏症。

次回はMIEやKEについて、詳細を纏めたいと思います。





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